リモートアクセスとは?テレワークに必須の技術について知っておきたいこと
2022.06.13投稿、2023.09.04更新
リモートアクセスとは、自宅や営業先など、オフィス以外の場所からオフィスのネットワークやPCに接続することを指す言葉です。ここ数年でテレワークが普及し、リモートアクセスをする機会が増えています。リモートアクセスは、社内ネットワークに社外からアクセスすることになるため、セキュリティには十分な注意が必要です。
リモートアクセスにはいくつかの接続方法がありますが、それぞれ異なる特徴があり、どの方法を使えばよいか迷う企業もあるかもしれません。
今回は、リモートアクセスの概要、代表的な接続方法とそれぞれの特徴を説明するとともに、リモートアクセスの種類や導入する際の流れやポイントを解説します。
リモートアクセスについては、以下の資料もご参照ください。リモートアクセス方式の種類や各仕組み、メリット・デメリットを図解でわかりやすく解説しています。
リモートアクセスとは
リモートアクセスとは、手元の端末からネットワークを経由して、遠隔地にある業務リソースや社内のPCにアクセスすることです。この方法を用いて、自宅や出張先、営業現場などからオフィスのサーバーやPCにアクセスできます。
リモートアクセスを行う場面が増えている
リモートアクセスによって、出社しなくても社内のPCを操作でき、オフィスにいるときと同じように業務を遂行できます。また、ユーザーサポート部門の担当者が自社オフィスから顧客の端末にアクセスして、操作や指導をするという使い方もされています。
近年は、業務効率化や働き方改革の実現のためにテレワークの普及が進みました。これまではテレワークを視野に入れていなかった企業でも、導入する動きが見られます。そのためリモートアクセスの需要が増え、リモートアクセスを実現するためのサービスやツールが注目されているのです。
最近ではテレワークだけでなく、テレワークとオフィス勤務を併用するハイブリッドワークという働き方も増えてきました。今後もこの動きは止まらず、テレワークには一定の需要があると予測されています。
リモートアクセスとリモートデスクトップの違い
リモートアクセスと似た言葉に「リモートデスクトップ」があります。
両者は語感が似ていますが、定義は異なります。
リモートアクセスは、社外にある端末からインターネット経由で社内ネットワークに接続し、データにアクセス・操作することです。リモートアクセスを実現するにはいくつかの方法があります。
リモートデスクトップは、リモートアクセスを実現する方法の1種です。社内の機器を動作させ、その画面・マウス・キーボードの情報を社外の端末に転送しています。ユーザーは手元の端末の画面・マウス・キーボードから社内の機器を遠隔操作し、ファイルの操作・編集を行うことが可能です。
リモートデスクトップのなかには、仮想デスクトップ方式のように手元の端末にデータを保存しない方法もあります。これは情報漏洩を防ぐためです。
リモートデスクトップについては、以下の記事もご覧ください。
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リモートデスクトップとは?種類やメリット・デメリットなどを紹介
リモートアクセスのメリット
企業がリモートアクセスを実現する場合のメリットを、企業側、利用する従業員側に分けて紹介します。
企業側のメリット
リモートアクセスを実現することで、企業には次のようなメリットがあります。
- 業務効率化
リモートアクセスが可能になれば、外回りが多い従業員が外出先で業務を行ったり、通勤時間を削減してその分業務に充てたりすることが可能です。そこから業務効率化につながります。
- 働き方改革の実現、人材確保
出社しなくてもオフィスにいるときと同じように業務ができるため、出社が困難な従業員を在宅勤務させることが可能です。勤務形態の多様化は働き方改革の実現につながります。優秀な人材の確保もしやすくなるでしょう。
- オフィスにかかるコストの削減
出社する従業員数が減少すれば、交通費の削減、オフィス面積の縮小化、従業員用に準備する端末数の削減、郊外・地方へのオフィス移転なども実現可能です。オフィスにかかるコスト削減につながります。
- 情報漏洩への対策
リモートアクセスが可能になれば、自宅で作業するときもオフィスから端末や記憶媒体を持ち出す必要はなくなります。それによって情報漏洩の防止につながります。
- BCP対策
災害やパンデミックが発生してもオフィスに出社する必要がないので、従業員の安全を確保できます。また、データがクラウドサーバーにあれば、オフィスが災害に遭ってもデータは保存可能です。
BCP対策については、以下の記事をご覧ください。
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テレワークはBCP対策としても有効!その理由や導入のポイントとは
従業員側のメリット
リモートアクセスを実現することで、従業員には次のようなメリットがあります。
- 自由な働き方が実現
リモートアクセスにより、自宅やコワーキングスペースでも業務が可能になります。これは自由な働き方や働き方改革の実現にもつながります。
- 時間を有効に活用
外出先や自宅からでも業務が可能になり、通勤時間を削減できます。また、移動中の隙間時間にも業務が可能なため、時間を有効に使うことが可能です。
- 使い慣れた端末の利用
私物の端末を使うことが可能なら、使い慣れた端末で仕事ができるようになります。
リモートアクセスを実現する前に検討すべき課題
企業がリモートアクセスを実施した場合に起こりえる問題を、企業側と従業員側に分けて紹介します。
企業側の課題
リモートアクセスを実現するにあたり、企業は次のような課題を想定する必要があります。
- セキュリティリスクが上がる
リモートアクセスでは、インターネット経由で社内ネットワークにアクセスするため、不正アクセスや情報漏洩などのセキュリティ上のリスクが上がります。
- 初期コストが必要
リモートアクセスを実現するためには、機器の増設などの初期コストがかかります。
- ネットワークの強化が必要になる場合もある
多くの従業員が同時にリモートアクセスを行えば、回線が混雑し、動作速度が低下します。場合によっては設備の増強が必要です。
- 新しい勤怠管理や評価体系が必要
テレワークでは従業員の働きぶりが見えにくく、従来の評価方法では評価しにくくなります。そのため、新しい勤怠管理方法や評価体系が必要になります。
従業員側の課題
リモートアクセスを行う場合、従業員側で次のような状況が生じると想定されます。
- 事前の準備が必要
リモートアクセスを有効にするためには、会社の端末の設定や確認、手元の端末の設定など、事前の準備が必要です。
- 認証に手間がかかる
リモートアクセスでは社内ネットワークに外部からアクセスするため、ログイン時の認証が厳重になることが多く、その分の手間がかかります。
- ネットワークが遅くなることもある
多くの従業員が同時にリモートアクセスを行えば、ネットワークが混雑して遅くなります。その場合、業務にストレスを感じることもあるでしょう。
- より強固な自己管理が必要
リモートアクセスでは、セキュリティ面でユーザーが把握するべきことも多くなります。そのため、より強固な自己管理が必要です。
リモートアクセスツールの主な機能
リモートアクセスツールには、次のような機能があります。
- 遠隔操作
自宅などの遠隔地からオフィスにあるPCを操作し、データにアクセスします。オフィスにあるアプリケーションやファイルを遠隔で操作できるので、オフィスにいるときと同じような業務が可能です。
また、手元の端末にインストールされた指定のアプリケーションからメールを確認したりなど、軽微な業務を遠隔で行うこともできます。
- セキュリティ対策
リモートアクセスに必要なセキュリティ対策を行い、インターネット経由の作業でも安全性を確保することが可能です。たとえば、データの暗号化、アクセスログの保存・監視、フィルタリングなどを行います。
- 認証
VPN、社内ネットワーク、アクセス権限の必要なファイル・フォルダなどを使用するための認証を行います。さまざまな認証方法に対応可能です。
- マルチデバイス対応
さまざまな種類のOSや端末からのリモートアクセスが可能です。それによって、自宅の端末の種類やOSがオフィスのPCとは異なっても、リモートアクセスで操作できます。
リモートアクセスの種類と代表的な接続方式
リモートアクセスの接続先による分類には、2種類あります。自宅の端末からオフィスにあるサーバーへアクセスする「サーバーアクセス型」と、自宅の端末からオフィスにあるクライアント(PC)へアクセスする「クライアントアクセス型」です。また、接続方法もいくつかの種類に分けることができます。
代表的な接続方法は、次の4種類です。
- VPN接続
- リモートデスクトップ(画面転送方式)
- セキュアブラウザ方式
- API接続
それぞれ、仕組みやメリット・デメリットが異なります。接続方法による分類について説明します。
VPN方式
VPNは「Virtual Private Network」の略称で、インターネット上に仮想のプライベートネットワークを構築し、安全な通信を実現する接続方式です。あらかじめ認証されたユーザー以外は使用できないため、安全性が高い方法といえます。オフィスにいるような感覚で業務を行うことができ、テレワーク端末上にデータの保存も可能です。
実際に専用線を引く場合とは異なり、距離が離れていても手軽に実現できます。ただし、リモートアクセスサーバー(RAS)、つまり、社外から社内ネットワークに接続するための中継サーバーの構築が必要です。
仕組みとしては、安全な通信を実現するため、次の4つの技術が使われています。
- トンネリング:データをトンネルのような専用経路で送受信し、オープンなインターネット回線と隔離する技術
- カプセル化:データをカプセルのようなもので包み、確実に送信先に届ける技術
- データの暗号化:データをロックし、漏洩しても中身を見られないようにする技術
- 送受信者の認証:送受信者が正しく権限を保有することを確認する技術
VPN方式には、次のようなメリットがあります。
- オフィス内と同等の環境で業務が可能
- オフィス内と同等のセキュリティレベルの確保が可能
- 通信回線の影響を受けるものの、テレワーク端末上での作業で回避可能
VPN方式には次のようなデメリットもあります。
- テレワークの端末にもデータ管理とセキュリティ対策が必要
- 端末の紛失や盗難による情報漏洩のリスクがある
VPN方式については、次の記事もご覧ください。
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リモートアクセスとVPNの違いとは?VPNの種類や構築する際の流れを解説
リモートデスクトップ方式
テレワーク端末からオフィスのデスクトップ環境に接続して遠隔操作する方法です。手軽に導入できるので、最近のリモートアクセスツールの主流となっています。
仕組みとしては、リモートデスクトップ方式での接続を実現するツールを利用します。利用するツールには、次のようなものがあります。
- Windows OSの標準機能を利用する
- Chromeブラウザの標準機能を利用する
- 専用のアプリケーションやクラウドサービスを利用する
使い勝手やセキュリティは実現方法により異なります。
リモートデスクトップについては、以下の記事をご覧ください。
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リモートデスクトップとは?種類やメリット・デメリットなどを紹介
リモートデスクトップ方式には、次のようなメリットがあります。
- 専用ネットワークの構築などが不要で、手軽にすぐに始められる
- 実現方式により異なるが、比較的低コスト
- 手元の端末のスペックは低くても問題なく、スマートフォンやタブレットからの利用も可能
- オフィスと同等の業務やセキュリティレベルの確保が可能
- データの持ち出しが不要
リモートデスクトップ方式には、次のようなデメリットもあります。
- パフォーマンスの面は、通信回線の影響を受けやすくなる
- 社内の端末の電源を入れておく必要がある
- 私物の端末を業務に使うことが多いため、管理が必要
セキュアブラウザ方式
不正アクセスや情報漏洩防止対策を強化し、「セキュアブラウザ」を利用する方法です。
セキュアブラウザとは、通常のWebブラウザとは異なる機能を持ち、セキュリティ機能に特化したブラウザのことです。
仕組みとしては、手元の端末からセキュアブラウザを経由して社内システムやクラウドサービスにアクセスし、業務を行います。セキュアブラウザを通すことでフィルタリングを行い、安全性を確保できます。
セキュアブラウザ方式には、次のようなメリットがあります。
- データが端末内に残らないため、情報の外部流出を防ぎやすくなる
- 社内システムへのアクセス制限やURLのフィルタリングで、ウイルス感染を防ぐ
- VPNが不要で手軽に使うことができ、通信回線の影響を受けにくくなる
- 個人の端末、スマートフォンやタブレットでも使いやすい
セキュアブラウザ方式には、次のようなデメリットもあります。
- コピー&ペーストやファイル送信、ダウンロードなどが自由に行えないので作業しにくい
- Webブラウザだけでは完結しない作業も多いため、業務が限られる場合もある
- 一般的なインターネットブラウザとは異なるため、操作に慣れる必要がある
API方式
クラウドサーバー上で提供されているアプリケーションにアクセスして業務を行う方法です。
仕組みとしては、手元の端末から社内ネットワークではなく、インターネット上のクラウドサービスに直接接続します。クラウドサービスのAPIを利用して、社外から直接アプリケーションにアクセスし、利用できます。
API方式には、次のようなメリットがあります。
- 少数から、必要な数量のみで利用可能
- 社内ネットワークに接続しないため通信回線の影響はない
- 対応しているサービスなら、簡単な設定のみで手軽に導入できる
API方式には、次のようなデメリットもあります。
- 対応しているクラウドサービスでしか使えない
- データはテレワーク端末にも保存されるため、分散したデータの管理が必要
- 社内ネットワーク上に設置されたセキュリティを使えないので、端末を守る必要がある
リモートアクセスツールの種類については、次の記事もご覧ください。
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リモートアクセスツールにはどんな種類がある?選び方やおすすめ製品も紹介
リモートアクセスを導入する際の流れとポイント
接続先や接続方式にかかわらず、リモートアクセスを導入する際に共通する手順と、そのポイントを説明します。
リモートアクセス導入の流れ
- 接続方法と接続先を決める
社内の利用状況やリモートアクセスの目的などから、どの接続方法を利用するかを決定します。導入するために必要な設備や費用も選定の要因です。同時に、接続先も決定します。
- 接続するためのツールを選定する
機能や費用、社内の利用状況などから、利用するツールやサービスを選定します。
- 導入準備を行う
導入のための準備を行います。準備には、サーバーの準備、ツールのインストール、サーバーや端末の設定、マニュアル作成などがあります。
- 社内の一部で導入する
全社で一斉にスタートするのではなく、一部に限定して導入します。
スモールスタートで開始することで、準備不足やトラブル要因を可視化し、対策できます。
導入時には、ユーザーとなる従業員にあらためてセキュリティに関する教育を行うことも重要です。
- 全体に展開
スモールスタートで可視化したトラブルへの対策を行い、効果を確認してから、全社に展開します。
これによって、スムーズに全社展開が可能です。
導入のポイント
テレワークやリモートアクセスの導入を行う際には、次のようなポイントに注意が必要です。
- 導入のコスト・難易度と利便性のバランス
リモートアクセスにはいくつかの接続方式があります。リモートアクセスを実現しやすく従業員が使いやすいものから、実現する難易度が高いものまでさまざまです。
難易度と使いやすさ、必要なコスト、セキュリティ対策などを比べて、自社に適切な接続方式を選びましょう。
- 社内ネットワークへの負担
リモートアクセスで業務を行っていると、社内のネットワークに常時接続していなくてはなりません。人数が多い場合、オフィス側のネットワークリソースにも負担がかかります。場合によっては、ネットワーク環境の強化などの整備が必要です。
- テレワークを行っている従業員の勤怠管理
テレワークでは従業員の様子を目で確認できないため、勤務時間の把握が困難です。そのため、勤務状況を管理できるツールを導入する、新しい評価体系を導入するなどの対策が必要です。
- セキュリティの管理
リモートアクセスでは、インターネット経由で社内ネットワークにアクセスします。また、テレワークでは従業員の私物の端末を業務に使う(BYOD)ことも多くなります。
どちらもセキュリティ上のリスク要因となるので、安全に業務を行うためには、セキュリティ対策を強化する必要があります。
リモートアクセスのセキュリティについては、次の記事もご参照ください。
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各接続方式の特徴を知って、最適なリモートアクセス環境を構築しよう
リモートアクセスは、場所を選ばずに業務を遂行できるため、テレワークの実施には必須の技術です。働き方改革の推進やBCP対策など、これからもテレワークを利用する機会は増えるでしょう。そのため、リモートアクセスを実現する準備は進めなければなりません。
リモートアクセスにはいくつかの接続方式が存在し、それぞれに特徴があります。各方式の特徴を理解したうえで、コストやセキュリティを考え、自社に合ったものを選びましょう。
特にセキュリティ対策は重要です。リスクをゼロにすることはできないため、少しでも安全性の高い方法を選定しましょう。あまり手間をかけたくない場合は、セキュリティも確保しつつ容易に接続できるリモートアクセスツールの導入をおすすめします。
「CACHATTO」は、PCやタブレット、スマートフォンなどの社外の端末から、社内のPCや業務リソースに安全にリモートアクセスできるサービスです。社内ネットワーク、またはクラウドサービス上にCACHATTOサーバーを設置するだけで、VPNを設置することなく、簡単にリモートアクセスを利用できます。
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