【被害事例あり】サイバーセキュリティとは?企業が知るべき基礎知識から最新対策
2025.01.29投稿、2025.01.29更新
デジタル化が急速に進展する現代社会において、サイバーセキュリティの重要性は日々高まっています。サイバー攻撃の脅威は拡大の一途をたどり、個人から大企業まで、誰もがその標的となり得る状況です。2024年も、日本国内では大規模な攻撃が相次いで発生しており、サイバーセキュリティは今や避けて通れない喫緊の社会課題となっています。
本記事では、最新の攻撃事例を交えながらサイバーセキュリティの基礎知識から対策まで、企業が把握しておくべき重要事項を分かりやすく解説します。
サイバーセキュリティの基本概念と重要性
デジタル時代の安全を守る要となるサイバーセキュリティについて、その基本概念とビジネスにおける重要性を解説します。
サイバーセキュリティとは
サイバーセキュリティとは、コンピューターシステム、ネットワーク、プログラム、そしてデータを、デジタル攻撃から保護するための一連の技術や実践のことを指します。具体的には、不正アクセスの防止、データの機密性・完全性・可用性の確保、そしてサイバー空間における様々な脅威からの防御を目的としています。
情報セキュリティとの違い
情報セキュリティが情報全般(デジタル・非デジタルを問わず)の保護を対象とするのに対し、サイバーセキュリティはデジタル領域に特化しているという点が大きな違いです。
なぜ今、サイバーセキュリティが重要なのか
デジタル化の波が企業活動のあらゆる面に押し寄せる中、ITシステムやインターネットの利用は不可欠となっています。クラウドサービスの普及、IoTデバイスの増加、リモートワークの一般化など、デジタル技術は業務効率を飛躍的に向上させました。しかし、この恩恵の裏側で、サイバー攻撃のリスクも急激に高まっています。
サイバー攻撃が企業に与える影響は甚大です。直接的な金銭的損失はもちろん、機密情報の流出、業務の停止など、その被害は多岐にわたります。さらに深刻なのは、企業の信頼性が失墜することです。一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。このように、サイバーセキュリティは現代企業の事業継続に直結する重要課題となっており、適切な対策の実施は企業の競争力維持に不可欠といえます。
サイバーセキュリティの種類
サイバーセキュリティは多岐にわたる対策から成り立っています。ここでは、主要な3つの分野であるネットワーク、エンドポイント、クラウドセキュリティについて説明します。
- ネットワークセキュリティ
ネットワークセキュリティは、組織の通信ネットワーク全体を保護するための対策です。ファイアウォールによる不要な通信の遮断、IPSによる異常な通信パターンの検知と遮断、VPNによる通信の暗号化などを実施し、外部からの不正アクセスや内部からの不正な通信を防ぎ、組織のネットワーク全体を守ります。
- エンドポイントセキュリティ
エンドポイントセキュリティは、PC、スマートフォン、タブレットなど、ネットワークの端末となる個々のデバイスを保護する対策です。主にウイルス対策ソフトの導入によるマルウェアの検出・駆除、不審な挙動の監視、デバイス制御などを行い、個々のデバイスレベルでの脅威を防ぐことで、組織全体のセキュリティを強化します。
- クラウドセキュリティ
クラウドセキュリティは、クラウド環境で扱うデータやサービスを保護するための対策です。データの暗号化、アクセス権限の厳格な管理、多要素認証の導入、セキュリティ監視などを実施し、クラウド上の情報漏洩やデータ損失、不正アクセスを防ぎ、安全なクラウド利用を実現します。
エンドポイントセキュリティ、クラウドセキュリティについては、次の記事も参考にしてください。
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サイバー攻撃の主要な種類と手口
日々進化するサイバー攻撃の脅威に対して、主要な攻撃の種類と手法を理解することが重要です。ここでは、最新のトレンドを含む様々なサイバー攻撃の手口を詳しく解説します。
マルウェア攻撃
マルウェアとは、「悪意のあるソフトウェア」を意味する"malicious software"の略称です。コンピューターやスマートフォンなどのデジタル機器に意図的に害を与えることを目的として作成されたプログラムの総称です。ユーザーの知らないうちにシステムに侵入し、データの窃取や破壊、不正な操作などを行い、深刻な被害をもたらす可能性があります。
- ランサムウェア
データを暗号化し、解除と引き換えに身代金を要求します。感染すると、ファイルにアクセスできなくなり、多額の金銭を要求されます。
- Emotet(エモテット)
他のマルウェアの感染を助長する高度な脅威です。メール経由で拡散し、一度感染すると別の危険なマルウェアをダウンロードする「トロイの木馬」として機能します。
- スパイウェア
ユーザーの行動を密かに監視し、情報を収集します。キーボードの入力内容を記録したり、画面の様子を密かに撮影したりするなど、様々な方法で個人情報を盗み取ります。
不正アクセス型攻撃
不正アクセス型攻撃とは、システムやネットワークに不正な方法で侵入し、権限を奪取しようとする攻撃です。主に認証システムの脆弱性や、ユーザーの不注意を突いて行われます。この種の攻撃は、データの窃取や改ざん、さらなる攻撃の足がかりとして利用されることが多く、深刻なセキュリティリスクとなっています。
- パスワードリスト攻撃
過去に流出したIDとパスワードの組み合わせを使用して、複数のサービスに不正ログインを試みます。ユーザーが同じパスワードを使い回している場合に特に危険です。
- ブルートフォース攻撃
考えられるあらゆるパスワードを総当たりで試す攻撃です。単純なパスワードや短いパスワードは、この攻撃に弱いとされています。
- SQLインジェクション
Webアプリケーションの入力フォームなどを通じて、不正なSQL文をデータベースに挿入し、情報を抜き取ったり、データを改ざんしたりします。
社会工学的手法を用いた攻撃
社会工学的手法を用いた攻撃とは、技術的な脆弱性ではなく、人間の心理や行動の特性を利用して情報を盗み取る攻撃手法です。信頼や権威、緊急性などを巧みに利用し、被害者を騙して機密情報を開示させたり、不正な行動を取らせたりします。この種の攻撃は、技術的な対策だけでは防ぎきれず、ユーザー教育が重要となります。
- フィッシング
実在する組織を装った偽のWebサイトやメールを使って、個人情報やログイン情報を騙し取ります。巧妙に作られたものは、見分けるのが非常に困難です。
- 標的型攻撃(スピアフィッシング)
特定の個人や組織を狙った高度なフィッシング攻撃です。事前の情報収集により、非常に説得力のある偽のメールを送付してきます。
- ビジネスメール詐欺(BEC)
企業の経営者や幹部になりすまし、従業員や取引先に対して金銭の振り込みや機密情報の送付を要求します。高額の被害が報告されています。
サービス妨害攻撃
サービス妨害攻撃(DoS攻撃)とは、ターゲットのシステムやネットワークに大量のトラフィックや不正なリクエストを送りつけ、正常なサービス提供を妨害する攻撃です。これにより、Webサイトがアクセス不能になったり、ネットワークが遅延したりする事態が発生します。特に複数の攻撃元から同時に行われる分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)は、対処が困難で深刻な被害をもたらす可能性があります。
- DDoS攻撃
多数の感染コンピューター(ボットネット)を使って、一斉に大量のアクセスやデータを送信し、サーバーやネットワークを機能不全に陥らせます。
- SYNフラッド攻撃
TCP接続の確立プロセスを悪用したDDoS攻撃の一種です。大量の接続要求を送り、サーバーのリソースを枯渇させます。
最新のサイバー攻撃トレンド
新しい技術や環境の変化を利用した、従来とは異なる手法や標的を持つ攻撃が増えてきています。これらは従来の防御策では対処が困難な場合が多く、企業に新たな脅威をもたらしています。
- AIを活用した高度な攻撃
機械学習技術を用いて防御システムを回避したり、より説得力のある偽のコンテンツを生成したりする攻撃手法です。従来の静的なセキュリティ対策では検知が困難です。
- サプライチェーンを狙った攻撃
取引先や委託先など、サプライチェーン上の脆弱な組織を経由して目的の企業に侵入する手法です。直接の取引先だけでなく、その先の協力会社まで攻撃対象となる可能性があります。
- IoTデバイスを標的とした攻撃
セキュリティが脆弱なIoT機器を踏み台として利用し、より大規模な攻撃を仕掛ける手法です。家電や産業機器など、多様なIoTデバイスが攻撃対象となっています。
サイバー攻撃については、次の記事も参考にしてください。
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サイバー攻撃の種類にはどんなものがある?最近の動向や被害事例も紹介
サイバー攻撃の最新実例と教訓
実際に発生した大規模サイバー攻撃の事例を分析し、企業が学ぶべき教訓と対策のポイントについて詳しく紹介します。
KADOKAWA・ニコニコ動画への攻撃事例
2024年6月、KADOKAWAグループが大規模なサイバー攻撃を受け、ニコニコ動画を含む複数のサービスが約2か月にわたり停止しました。攻撃者は従業員のアカウント情報を窃取して社内ネットワークに侵入し、約1.5TBの社内データを盗み出した後、ランサムウェアでデータを暗号化しました。この攻撃により、約25万人分の個人情報流出の可能性が指摘され、企業情報や契約書なども外部に流出しました。
被害は甚大で、KADOKAWAグループの売上高への影響は84億円、営業利益への影響は64億円、特別損失として36億円が発生する見通しが公表されています。
JR東日本への攻撃事例
2024年5月10日、JR東日本の複数のインターネットサービスがサイバー攻撃を受け、約4時間半にわたり障害が発生しました。モバイルSuica、えきねっとなどの主要サービスへのアクセスが困難となり、ログインやチャージ機能が利用できない状況に陥りました。JR東日本によると、通常とは異なる大量のアクセスが継続的に行われたことが原因とみられています。
幸いにも、列車運行への直接的な影響はなく、既存のチャージ残高や定期券の使用は可能でした。JR東日本は迅速に対応し、同日22時頃までにはほぼ通常の状態に復旧しています。
住友重機械工業へのサイバー攻撃事例
2024年2月、住友重機械工業がサイバー攻撃を受け、グループ会社の一部サーバーへの不正アクセスが確認されました。同社は直ちに外部専門家と協力して調査を開始し、影響を受けた可能性のあるサーバーとパソコンを隔離する対策を講じました。この攻撃により、従業員の個人情報(氏名、所属情報、社用連絡先など)が漏洩した可能性が明らかになり、少なくとも69名分の社用メールアドレスの漏洩が確認されました。
住友重機械工業は本事案を受けて、情報セキュリティ体制の強化に取り組むことを表明し、影響を受けた従業員への個別連絡や情報開示を行っています。
これらの最新事例から明らかなように、サイバー攻撃の手法は日々進化し、その影響も広範囲に及んでいます。大手企業でさえ深刻な被害を受けている現状を踏まえると、企業規模に関わらずサイバーセキュリティ対策の重要性が浮き彫りになります。
特に注目すべき点は、ランサムウェア攻撃の深刻化、サプライチェーンを通じた攻撃の増加、そして攻撃による業務への影響の大きさです。これらの事例から、定期的なデータバックアップ、多層的な防御体制の構築、具体的なインシデント対応計画の策定、そしてサプライチェーン全体のセキュリティ強化が不可欠であることが分かります。
さらに、これらの対策を効果的に機能させるには、経営層の理解と支援、従業員全体のセキュリティ意識向上、そして最新の脅威に関する継続的な情報収集と対策の更新が重要です。サイバーセキュリティは一過性の対策では不十分であり、常に進化し続ける脅威に対応できる柔軟かつ強固な体制づくりが求められています。
効果的なサイバーセキュリティ対策
多層防御から人的セキュリティまで、組織全体で取り組むべき効果的なサイバーセキュリティ対策について詳細に解説します。
多層防御の重要性
サイバーセキュリティ対策は、それぞれが重要な役割を果たしていますが、単一の対策だけでは十分な防御を実現することは困難です。サイバー攻撃の手法が日々進化し、複雑化する中、組織の情報資産を守るためには、これらの対策を組み合わせた「多層防御」アプローチが不可欠となっています。
ネットワーク、エンドポイント、クラウドの各レベルでセキュリティ対策を講じることで、攻撃者が組織のシステムに侵入する経路を大幅に制限し、たとえ一つの防御層が突破されたとしても、次の層で阻止できる可能性が高まります。また、各層での監視や検知を組み合わせることで、攻撃の早期発見と迅速な対応が可能になります。
人的セキュリティの強化
サイバーセキュリティを確保する上で、技術的な対策だけでなく、人的な面での強化も不可欠です。特に重要なのが、従業員教育とセキュリティポリシーの策定・浸透です。
従業員教育においては、定期的なセキュリティ研修を実施し、刻々と変化する脅威の最新動向や適切な対処法について理解を深めることが重要です。これにより、従業員一人ひとりがセキュリティリスクを認識し、日常業務の中で適切に対応できるようになります。
同時に、組織全体で遵守すべきセキュリティルールを明確に定めたポリシーを策定し、それを全従業員に浸透させることが求められます。明確なガイドラインがあることで、個々の判断のばらつきを抑え、組織として一貫したセキュリティ対策を実現できます。
さらに、最新のセキュリティ概念である「ゼロトラストセキュリティ」の導入も検討に値します。この概念は、「何も信頼せず、常に検証する」という原則に基づいており、社内外を問わずすべてのアクセスを検証します。ゼロトラストの実装には、多要素認証の徹底、最小権限の原則の適用、常時の監視と分析などが含まれます。この概念を従業員教育やポリシーに組み込むことで、より強固なセキュリティ体制を構築できます。
これらの取り組みを通じて、技術と人材の両面から組織のセキュリティ体制を強化し、サイバー脅威に対する耐性を高めることができます。人的セキュリティの強化と最新のセキュリティ概念の導入は、組織全体のセキュリティレベルを底上げし、より強靭な防御体制の構築につながります。
ゼロトラストセキュリティについては、次の記事も参考にしてください。
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安全なデジタル社会の実現に向けて
サイバーセキュリティは、現代のビジネスにおいて避けて通れない重要課題です。サイバー攻撃の手法が日々進化し、その影響範囲が拡大しています。マルウェア、フィッシング、DDoS攻撃などの従来型の脅威に加え、AIを活用した高度な攻撃やサプライチェーンを狙った攻撃など、新たな脅威が次々と現れています。
これらの脅威に対抗するためには、技術的対策と人的対策の両面からのアプローチが不可欠です。ネットワーク、エンドポイント、クラウドの各レベルでの多層防御の構築、従業員教育の徹底、そしてセキュリティ概念であるゼロトラストセキュリティの導入など、包括的な対策が求められます。
また、サイバーセキュリティは一度対策を講じればそれで終わりというものではありません。常に最新の脅威に対する理解を深め、適切な対策を講じ続けることが重要です。そのためには、本記事で紹介したような基本的な対策から最新の技術動向まで、幅広い知識を活用することが大切です。
こうした知識を基に、個人や組織は定期的にセキュリティ対策を見直し、改善していく必要があります。日々変化するデジタル環境において、セキュリティ対策の更新は、オンライン上の安全を確保するための重要な習慣となります。
そして、より高度なセキュリティを求める企業には、データレスクライアントの導入が有効な選択肢となります。データレスクライアントである「セキュアコンテナ」なら、隔離されたセキュアな業務領域を生成し、その中でのみ業務を行うことができるため、端末内に業務データを残すことなく、高度なセキュリティを実現します。業務終了時にはその領域を削除するため、MDMの導入やリモートワイプを使用せずに、万が一端末の紛失や盗難が発生した場合でも、重要なデータを失う心配がありません。さらに、スマートフォンやタブレットからのセキュアブラウザによる作業にも対応しているため、多様な働き方にも柔軟に対応できます。
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