サンドボックスが切り拓く新たなセキュリティ対策 - 多層防御の要としての活用法
2024.09.12投稿、2024.09.12更新
サンドボックス技術は、セキュリティ対策の要として注目を集めています。サイバー攻撃が高度化・巧妙化する中、ウイルス対策ソフトなどの既知の脅威に特化した防御策だけでは、未知の脅威に対抗することが難しくなっているため、サンドボックスによる動的解析の重要性が増しています。
本記事では、サンドボックスを活用した多層防御の考え方と、具体的な活用方法について解説します。サンドボックスを適切に組み込むことで、高度な脅威にも対抗できる、強靭なセキュリティ基盤を構築できるでしょう。
サンドボックスの基本的な動作原理、種類や特徴については次の記事をご確認ください。
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サイバー脅威の高度化と多層防御の必要性
巧妙化するサイバー攻撃の実態
近年、サイバー攻撃は一層の巧妙化・複雑化を遂げています。ゼロデイ脆弱性を突いた攻撃は後を絶たず、攻撃者はこれまで知られていなかった脆弱性を発見次第、それを悪用する手口を編み出しているのが現状です。さらに、AIを活用したサイバー攻撃も台頭しつつあります。AIは膨大な量のデータを分析し、攻撃の成功率を向上させる役割を果たしています。加えて、サプライチェーン攻撃の脅威も無視できません。信頼できるはずのビジネスパートナー経由でも、マルウェアに感染させられるリスクが高まっています。
ゼロデイ攻撃やサプライチェーン攻撃については、次の記事も参考にしてください。
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単一の対策では防げない高度な脅威
こうした高度な脅威に対し、単一のセキュリティ対策では十分な防御が難しくなっています。例えば、既知のマルウェアに特化したアンチウイルスソフトは、新種のマルウェアの検知には限界があります。また、ファイアウォールも、内部ネットワークに侵入したマルウェアの動きを止められない場合があります。そのため、ゼロトラストセキュリティモデルの重要性が叫ばれています。もはや「社内ネットワークは安全」という前提は通用せず、社内外を問わず全ての通信を検証する必要があるのです。
サンドボックスを活用したセキュリティ強化策
サンドボックスによるマルウェア防御
前述の課題を解決し、高度な脅威に立ち向かう技術の一つがサンドボックスです。サンドボックスは、怪しいプログラムを隔離された環境で実際に実行し、その挙動を詳細に分析します。これにより、未知のマルウェアやゼロデイ攻撃を検出・分析する「動的解析」が可能になります。従来のアンチウイルスソフトのような「静的解析」では見逃してしまう脅威も、サンドボックスなら捕捉することが可能です。
また、サンドボックスは、悪意あるコードの実行を隔離環境内に封じ込める効果もあります。マルウェアが仮に実行されても、被害を隔離環境内に限定できるため、システム全体への影響を最小限に抑えられます。
EDR、SOARとの連携
さらに、サンドボックスは他のセキュリティ対策との連携により、より強力な防御を実現します。EDR(Endpoint Detection and Response)と連携させれば、サンドボックスが検出した脅威情報をエンドポイントにリアルタイムに展開し、素早い対応が可能です。
SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)との連携も有効です。SOARにより、サンドボックスでの分析を自動化することができます。これにより、分析スピードと精度が向上し、脅威検出率を高められます。また、SOARを使えば、サンドボックスの分析結果を起点とした自動対応も可能です。感染端末の隔離や、ファイアウォールルールの更新など、一連の対応を自動化することで、被害を最小限に食い止められるでしょう。
サンドボックスの導入・運用における課題と解決策
パフォーマンスとユーザビリティのバランス
サンドボックスの導入・運用には課題もあります。まず、サンドボックス分析によるパフォーマンスへの影響を最小限に抑えることが必要です。サンドボックス分析はリソースを消費するため、業務への影響が懸念されます。
この課題への対策としては、ホワイトリストとブラックリストを活用し、分析対象を最適化することが有効です。明らかに安全と判断できるファイルはホワイトリストに登録してサンドボックスの分析対象から除外する一方、ブラックリストに登録された危険度の高いファイルは優先的に分析する、といった運用が必要になります。
また、クラウド型サンドボックスの活用も選択肢の一つです。クラウド上にサンドボックス環境を構築することで、オンプレミス環境の負荷を大幅に軽減できます。高度な分析に必要な計算リソースもクラウドなら柔軟に確保できるため、パフォーマンスとユーザビリティを両立しやすくなるでしょう。
運用負荷の軽減と自動化
もう一つの課題が運用負荷です。サンドボックスは分析結果の解釈に専門知識を要するため、運用には一定の工数がかかります。この課題を解決するには、分析結果の自動レポート化が有効です。レポートをテンプレート化し、自動生成することで、運用担当者の工数を大幅に削減できるでしょう。
加えて、AIを活用した分析結果の自動判定にも注目が集まっています。AIが分析結果を自動的に「安全」「要注意」「危険」などに分類することで、運用担当者の判断を支援できます。
さらに、セキュリティオーケストレーション機能により、サンドボックスの分析結果に基づいた自動対応が可能になります。例えば、危険と判定されたファイルを検出した際、自動的に関連する端末を隔離し、管理者に通知するといった対応を自動化できます。
サンドボックスを組み込んだセキュリティ戦略
ゼロトラストモデルにおけるサンドボックスの位置づけ
ゼロトラストモデルでは、全ての通信を信頼せず、常に検証することが求められます。この「検証」の役割を担うのが、サンドボックスです。
サンドボックスにより、ゼロトラストモデルにおける「検証」の精度を飛躍的に高められます。社内外を問わず、信頼できない通信は全てサンドボックスで検証し、脅威を排除します。このようにサンドボックスはゼロトラストモデルの実現に欠かせない要素と言えるでしょう。
ゼロトラストについては、次の記事も参考にしてください。
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多層防御の要としてのサンドボックス
また、サンドボックスは多層防御戦略の要としても重要な役割を果たします。ネットワーク、エンドポイント、クラウドなど、システムを構成するあらゆる層で、サンドボックスを活用することが重要です。各層でサンドボックスと他のセキュリティ対策を連携させることで、より厚みのある防御網を構築できます。
例えば、メールゲートウェイでサンドボックスを用いてメールの添付ファイルを分析し、エンドポイントではEDRとサンドボックスを連携させて未知の脅威を検出する。クラウド上のアプリケーションをAPI経由で呼び出す際も、サンドボックスで検証する。このように、システム全体に多層的にサンドボックスを組み込むことで、どこかの層で脅威を検知・ブロックできる可能性が高まります。
巧妙化する脅威にサンドボックスで対抗する
サイバー脅威のレベルが上がる中、サンドボックス技術への注目が高まっています。サンドボックスを適切に導入・運用することで、未知の脅威を見逃さず、被害を最小限に食い止めることができます。加えて、他のセキュリティ対策との連携により、多層防御の要として機能します。
ゼロトラストセキュリティモデルが浸透しつつある今、常に脅威の存在を想定し、そのリスクを許容レベルまで下げる努力が欠かせません。サンドボックスは、その中核を担う技術の一つです。自組織に適したサンドボックス活用法を探り、導入・運用の課題を克服することが、セキュリティ対策強化の鍵を握るでしょう。
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